第8回 公開講演会
サン=ジュストと「人間の尊厳」
―フランス革命の矛盾を問う―
講 師: 遅塚忠躬 (元東京大学教授、お茶の水女子大学名誉教授)
日 時: 2006年12月9日(土) 午後2:30〜4:30
会 場: 岩波セミナールーム
東京都千代田区神田神保町2-1 岩波ホール裏
神保町交差点側 岩波アネックスビル 3F
営団地下鉄半蔵門線、 都営地下鉄新宿線・三田線 神保町駅(A6出口
1分)
会 費: 500円 (どなたでもご参加いただけます)
主 催: サン=ジュスト研究会/ユニ・カレッジ
これまでの公開講演会
第1回 サン=ジュストとフランス革命
講師:遅塚忠躬 1999年9月11日
第2回 サン=ジュスト神話の形成
講師:安部住雄 2000年12月2日
第3回 「死の大天使」サン=ジュスト ―フランス革命期の青年像―
講師:山崎耕一 2001年12月1日
第4回 フランス革命期の女性たち ―サン=ジュストとその時代―
講師:安達正勝 2002年12月7日
第5回 革命から和解へ カンバセレス回想録刊行によせて ―サン=ジュストの時代とその後―
講師:横山謙一 2003年12月13日
第6回 フランス革命第三世代の思想と行動 ―サン=ジュスト『共和国制度論』再読―
講師:瓜生洋一 2004年12月4日
第7回 サン=ジュストの「祖国」を求めて ―フランス革命「逆説としての祖国」―
講師:大野英二郎 2005年12月10日
サン=ジュストの残した断片のなかに、「人間はだれにも従属せずに生きるべきである」という言葉があります。これは、具体的にいえば、乞食状態を絶滅しよう、ということでした。他人の憐れみにすがって乞食をすることは、その人の人間としての尊厳を傷つける行為です。だから、サン=ジュストの言葉は、人間の尊厳を回復しようということにほかなりません。
なぜ、彼は、人間の尊厳を強調したのでしょうか。それはフランス革命当時、すでに自由と平等の矛盾がはっきりと現れていたからです。革命の標語は「自由」と「平等」でした。しかし、自由は、弱肉強食をもたらして平等をそこないますし、平等を実現しようとすれば、自由が制限されることになります。フランス革命から今日までの歴史はこの矛盾をどうすれば克服できるか、という試行錯誤の歴史でもありました。
自由と平等という二つの理念が矛盾するとき、それを克服するためには、その二つよりも次元の高い理念を掲げてそれによって自由と平等の両方を制限するほかはありません。その高次の理念が「人間の尊厳」でした。ロベスピエールが「生存権の優位」という理念を掲げたのも、それと同じ意味です。
今日の日本においても、自由と平等の矛盾は切実な問題です。この矛盾を解決するために、サン=ジュストの掲げた「人間の尊厳」という理念をどのように適用すればよいのでしょうか。たとえば、いまクローズアップされている臓器移植に関して、臓器の売買はなぜ自由ではなくて禁止されるべきなのでしょうか。これらの問題を取り上げて、サン=ジュストの言葉の今日的意義を考えてみたいと思います。